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登山を安全に計画するための詳しい方法

単に山に登れるかどうか、ということとは別に、心地よい風に吹かれ、さわやかな汗を流し、緑の中で小さな花をひとつふたつ探すというささやかな日がそこにあって、これまでの1日と決定的にちがうということに気づいてくる。 与えられるものの価値というより、体から抜け出ていくもののなんともいいようのない爽快感が、たとえば風であり、汗であり、温泉であり、ビールなのだが、体のほうが一方的にそれらの価値を高めていってしまうのだ。ポケットの中にあっても、山の中ではまったく無用なコインの価値が、山を下りたとたんに何倍にも感じられてしまう。 ザブンと入る温泉が1000円だって高くない。至福の一瞬にそれだけの価値がある。缶ビールが、なんでこんなに安くていいのか? というような気持ちにもなる。海外旅行における為替レートのトリックのようなものが、小さな山でさえ起こるのだ。つまり、金には換算できない価値が山にある、ということに気づいてしまうのだ。 それはたぶん、体の爽快感として頭が感じる価値なのだ。皮膚感覚だけでなく、味覚やのどごしといったセンサーの感度も大きく変化する。そこから始まる頭と体のコミュニケーションを育てることが、小さな山登りの大きな収穫ではないかということに気づくのだ。

山登りプランニングの基本
旅は計画するのも楽しみのうち。 山のプラン二ングも同じです。 楽しく、安全な登山を計画するための重要項目を段階を追って解説します。

どんな山歩きをしたいのかイメージを整理
ひと口に登山と言っても、どんなふうに山を歩くかで、その内容は大きく異なる。たとえば新緑や紅葉を楽しむ樹林帯歩きと、迫力ある展望を楽しむ岩稜帯歩きとでは、必要な装備、準備がだいぶ違う。ただなんとなくあの山へというのではなく、行きたい山を思い描き、なぜその山に行きたいのか、何が見たくて、何がしたいのか、できるだけ具体的に希望を洗い出し、山旅のテーマを設定しよう。そうすれば必要な装備や準備はおのずと見えてくるはず。それが自分で考え、行動する山行プランニングの第一歩となる。

いつ、誰と登るのか決める
テーマが決まったら、「いつ登るのか」、「誰と登るのか」を考えよう。登山のシーズン選びで特に注意が必要なのは秋冬。場所によっては降雪と積雪の心配があるからだ。登山道に雪がつくと、山のリスクは急に高くなる。当然アイゼンやストックなどの備えも必要。基本的にビギナーのうちは雪の不安がない時期を選ぶようにしよう。また、誰と行くかも重要だ。 登山豊富な人が一緒であることに越したことはないが、計画段階で行きつけのショップの人からアドバイスを受けるというのも手。なお、初心者がひとりで山に入ることだけは絶対に避けたい。

登る山の情報を集める
段取り8分、とは言い古された言葉だが、プランニングにおいては事前の情報収集が8分といっても過言ではない。ガイドブックやインターネットで調べる、というのは当たりまえとして、ぜひ確認してほしいのが山を管轄する行政区の観光窓口への問い合わせだ。山の生きた情報を仕入れるには現地情報が一番。市町村の観光課では山の小冊子やガイドマップを制作していることも多く、場合によっては郵送で取り寄せることも可能。 また、花の開花時期や紅葉といった、旬の情報を知ることもできる。

歩くルートを決め、スケジュールを作る
同じ山でもどのルートを歩くかによってコースタイムは異なり、また難易度も変わってくる。初心者には一般的に標高差の少ないコースを選ぶのがおすすめだ。山地図やガイドブックに示されたコースタイムはあくまで目安なので、自分の歩くスピードがつかめないうちは、記載時間にプラスした時間を設定してスケジュールを組もう。 また、ルート上に水場やトイレはあるか、登山口までの公共交通機関はあるか、駐車場の有無、ケーブルカーなどを利用する場合は発着時間の確認も忘れずにしておこう。

メンバーの役割を決める
複数の人が協力し合いながら登る山のチームのことを「パーティー」と呼ぶ。メンバーそれぞれの経験や得意分野を生かした役割の設定が好ましいが、何より大切なのはリーダーを決めておくこと。リーダーを決めないと、山でいざというときの判断が乱れるためだ。リーダーはパーティーの中で最も経験のある人がなり、最も経験の浅いメンバーをサポートするようにしよう。またメンバー全員で共有する持ち物(たとえば調理用の水や食材、ワンバーナー、コッフェルなど)は誰が何を持っていくか、事前に分担を決めておこう。

いざというときに備えた用意をする
山で不測の事態に陥ったときに慌てないよう、対策を整えておくのがプランニングの最終仕上げ。まずは持ち物の確認から。思わぬ理由で下山が遅れた場合に備え、日帰りでもヘッドライトは携行しよう。 体調不良に対処する常備薬やケガの応急処置セットの携行も。また登山計画書の内容に不備はないか、出発前にもう一度チェックを。山岳保険も積極的に活用しよう。そして最後に、現地に行って荒天に見舞われた場合は、計画を中断して引き返す勇気をもつことも大切だ。

登山計画書について

登山計画書って何?
なぜ必要なの?

登山計画書は、入山から下山までの登山計画を記した書類のこと。 登山者がいつどこの山に入って、どのルートを通り、どこに宿泊し、どこへ下山するか。さらに、一緒に山に入るメンバーの氏名や緊急連絡先、登山に備えた装備や食糧の量などを記載する。関係先に提出することから、「登山届」や「入山届」、ともいう。

これらの情報は、万が一の遭難やケガなどに遭ったときに捜索や救助活動の手がかりとなるだけでなく、目撃情報を得るためにも役に立つ。登山計画書の提出は法的に義務付けられているものではないが、これがあるかないかで、救出までの時間が大きく変わる場合も。低山や日帰りでも起こり得る万が一に備えて、必ず書くように習慣づけよう。 また、実際に計画を書いてみることで、事前に不備を確認できたり、下山後に計画のよかった点、改善するべき点を見直せるというメリットもある。

登山計画書はどこに提出?
いつ、誰が回収しているの?

登山計画書は、登山口や入山案内所などにある登山ポストに投函すると、最終的にその地域を管轄している警察署へ提出され、シーズン中ずっと保管される。登山前でも自宅近くの警察署で受け取ってもらえるほか、管轄の警察のホームページ上からオンラインで提出できるものもある。もし登山を中止したとしても、取り消しの申請は必要ない。

登山計画書の書き方は、必要な情報が書いてあれば書式に特に決まりはない。ぜひ次の山行から活用してほしい。 すべて書き終わったら、警察だけでなく、家族や友人、勤務先などにもコピーを渡して山へ入ることを知らせておこう。そして、下山したらその報告も忘れずに。下山口で「下山届」の提出を求めているところもあるので、そのときは忘れずに対応しよう。