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山を上る時の効率的な歩き方を初心者でも分かりやすく解説

登りは、歩幅を狭めて「ひざを後ろに送る」だけ
山登り技術のポイントは一点に集約される。前に振り出した足に体重を移動し、ひざをポンと後ろに送るという歩き方だ。 曲がったひざが伸びた分だけ体を真上に持ち上げる、という意識が無駄な力を省くのだと思うが、ひざを伸ばしきった瞬間に体重を支えていた筋力は(たぶん) ゼロになって、骨にその仕事を渡す。 つぎの瞬間から使用する筋肉は(動きがちがうので)別のものに切り替わっていく。

「ひざを送る」という意識によって、筋肉を「使いながら休ませる」という高度な管理を実現させることができるのである。そしてこれはパテない技術であると同時に、パテてからの体力の延命工作にもなかなか有効なのだ。その場合には「筋肉をほぐしながら歩く」という感じになる。

そして、前に振り出した足にスムーズに体重を移動できる程度の歩幅で歩いている限り、あまり大きな力を求められない。4WDの車をローギアでジワーッと動かしていくような歩き方になるので、だれでも驚くほどねばり強く歩き続けることができる。

そして、主張したいのは「がんばらない」こと。できるだけゆっくりと登りながら花を楽しみ、風を味わい、緑に囲まれている幸せをかみしめていられたら、きつくはあってもつらいはずがない。 のどを潤す一口の水がまさに甘露となり、冷えた果物が宝石のように輝く。そういう幸せを味わいつつ登りたいのだ。 気持ちよく汗をかいたら、ほんの少しだが、体が山に近づいたと考えていい。月に1回の割合で10回山に登ったら、肉体は驚くほど山向きにチューンナップされていることを自覚できる。 だから1回目の山歩きは最初に登った山を、同じルートで登ってみることをすすめたい。


歩き方のコツ上り編

Q上りですぐに疲れてしまいます。なにかコツはありますか
A高尾山に登るにも、富士山に登るにも、必ず歩かなくてはいけないのが上り坂である。その傾斜や距離は違えども、山頂を目指す山歩きであれば通る道。上りきった先にある達成感や絶景を知るためには、何としてでも上りきりたい。そんな思いがあっても、上り坂はとても長く感じ途中で何度も歩くのを止めてしまおうかと、悩む瞬間は訪れたりもする。

そんな上りでバテてしまわないために、事前の体調管理や準備は基本として、歩き方で改善できることも多い。普段歩いている平地とは違い、登山道は木の根が張り出しているところもあれば、岩か転がっているところもある。きれいに整備されている道ばかりではないので、どんな状況でも落ち着いてゆっくりと、足場を確認しながら歩くことが大切である。誰かと会話をしながらでも息が切れずに歩けるくらいのペースがベスト。突然の出来事にも対処できるくらいの余裕のある気持ちをもつようにしよう。その他、下記に紹介する3つのポイントを覚えて、登山を快適に楽しもう

基本姿勢
腰が曲がり前かがみにならないように、背筋を伸ばす。回線は前の方へと送り、つま先だけを使い歩くのではなく、足の裏全体を地面と平行につき、全体を使って歩くようにする
1体の軸をまっすぐに
2姿勢をよくして胸を開く
3静加重、静移動

歩幅は小さく
長くてツラい上りは早く通り過ぎてしまいたい、少しなだらかになったから大股で歩こう。 その思いが、あとあと後悔する結果を招きかねない。上りでバテずに歩くためには、できるだけ歩幅は小さめにすることが重要。歩数は多くなるが足への負担はかなり軽減することができる。歩幅が小さくなれば自然と重心は真ん中になり、前足への重心移動も楽にできる。逆に言えば、基本姿勢を維持しようとすれば、自然と歩幅は狭くなっていく

呼吸は深く
歩き始めや休憩直後の上りでは、体が慣れずに息があがってしまうことが多い。そんなとき、息を吐いてすぐにまた吸ってと、つい浅い呼吸になってしまうが、ここで意識をして深呼吸をしてみてほしい。一度大きく空気を吸い込み、その空気をすべて外に出すまで息を吐く。その呼吸を繰り返しながら歩いてみると、呼吸が苦しくなることは少ない。慣れてくれば、自然と鼻呼吸もできるようになるので、始めは何度も意識しよう

Q段差のキツイところを、うまく歩くにはどうしたらいい?
歩幅を小さくと意識して歩いているときにも、突然目の前に現れた段差にそのペースを乱されてしまうこともある。足を大きく開かなくてはいけない場合は、一度落ち着いて周りを見渡してみてほしい。 どこかに、もっと楽に歩けるルートがないか。より小さな歩幅で歩けるところがあるならば、少し遠回りをしてでもそのルートを歩く方が疲れにくいだろう。しかし注意しなくてはいけないのが、そこが登山道かどうかということ。登山道以外を歩くことは、植生保護や安全面からもおすすめできない。登山道の中で、より歩きやすいルートを見極めよう。

Q友達と歩くとき、ふたりの間はどれくらい空けるべき
友だちと一緒に楽しく会話をしながらペースを守って歩くことは、疲れないためにもよいことであり、並んで歩くことも、人の少ない登山道や林道であれば、問題ない。しかし、登山道には狭いところもあり、人とすれ違わなくてはいけないタイミングや、ガレ場などの足場の悪いところもある。また、万が一転んでしまったときに隣にいる友だちとぶつかって巻き込んでしまったら、助け合うこともできなくなってしまう。そのため、相手の背中で景色が見えないくらい近づいて歩くことは、控えたほうがいい。友だちの背中を見ながらも、景色を楽しめる程度の視界が確保できるくらいの距離がおおまかな目安である。1-2mくらいの間隔をあけ、万が一の事態にも備えるようにしよう。

鎖やはしごを使って登るときのポイントはある
へっぴり腰がもっとも危険な歩き方、と言われても怖くて腰が引けてしまう。そんな人も、背筋と両手両足をまっすぐに伸ばせばバランスよく登り下りができるはず。とくに鎖場では、岩盤に対して体を平行に保ちヒザをしっかりと伸ばすようにすると、姿勢が安定して視界も開ける。はしごの場合は、土踏まずをしっかりとはしごの段に乗せるようにする。つま先が岩などに当たってつかえてしまうときは、土踏まずのすぐ前にあたる部分で踏みしめるといいだろう。安全のために設けられた鎖とはしごは信頼しよう。

一緒に歩く人とのペースが合いません。どうしたらいい?
歩くペースは、人それぞれである。その人の体力や経験、男女の差もあり、皆異なるのは当たり前のこと。歩くペースの違う人と、無理にペースを合わせて一緒に歩くことは、バテてしまう原因のひとつ。どんな状況でも、自分のペースを守りながら歩くことがとても大切である。

例えば、一緒に歩く人のペースについていけなくなったら、どこかで合流する約束をして別々に歩くことか望ましいだろう。どれくらいのペースで歩くことが一番楽なのか、まずはそれを知ることから始めよう。そして歩きながら、写真を撮ったり植物を見たりすることも、ペースを守るためにおすすめである

ポールを使うときに気をつけることはありますか
トレッキングポールの先端には、とがった金属部分を覆うゴムキャップを標準装備しているものがほとんどである。春から秋の無雪期の登山であれば、金属部分を使うことはほとんどないので、落とさないようにしっかりとキャップをはめておこう。これを装着しておくことで、森の土や木の根を不用意に傷つけることもなく、また木道など登山道を傷めずに済むこととなる。ポールは、手の一部のように使いこなすことができれば、自在にバランスがとれる便利なアイテム。注意しながら、使いこなそう

水分補給をするタイミングは
ノドが渇いたときにはすでに脱水症状というのは、もはや定説である。人の体は、呼吸をするだけで1日1.5リットルもの水を放出しているため、休憩ごとに水分補給をするようにしよう。しかし、女性はトイレが少ないことを気にして、水を飲まないようにする人もいるが、体温が上昇し血液の流れか悪くなってしまう。体にかかる負担を考えるとトイレよりも危険な事態になりかねない。個人の体質により違いはあるものの、こまめに飲んだ水分の大部分は汗として体外に出ていくので、安心して水分補給しよう。

道の脇に石がたくさん。コレなに?
積まれた石はケルンと呼ばれ、登山道が石ばかりで見分けのつけづらい場所や、稜線上などで見ることが多い。賽の河原と名付けられている山中の広大な平坦地や、道の分かりにくいガレ場や山頂、雪山などにおいて、登山道を指し示す同指標としての役割を果たしているものもある。ただし、登頂記念などと軽い気持ちで積まれたものも多いうえ、遭難者の墓標とされているものもあるため、ときに道しるべとしては、心もとないこともあるので注意。ちなみに、登山用語は一般的にドイツ語が多いが、ケルンは英語である。

四角い石が突き出してる。コレなに
山頂付近に設置されていることが多いこの石は、映画にも登場した三角点である。高さを示す標識としての役割のほか、火山・地殻活動の研究材料として、国土地理院が維持・所管している。三角点には一等から四等まであり、測量をするために見晴らしのよいところに設置されているのが普通であるため、必ずしもこの場所が一番標高の高い場所とは限らない。目立たないように設置されている場合もある。日本の山岳地帯の標高が分かっているのは、測量士によって過去に測定されているからである。