高度を読みとって現在地を確認するための高度計選び
高度をキャッチして、現在地点を即キャッチ方位コンパスはどちらかというと平たいところで有効なのに対して、日本の標準的な登山道では、行動を高度で管理するほうが合理的だ。
登山道をはずれずに上り下りしている限りにおいて、高度の変化がある程度正確に測れれば、それがそのまま地図上の現在位置の情報になってしまう。登山のナピゲーションツールとしての高度計がデジタル化して小さくなって、腕時計に組み込まれて、現在位置の確認はほとんどそれですんでしまうほど簡単になってきた。高度計が示す高度を、地図上の(登山道の)標高に当てはめればいいだけになる。
高度計は、気圧の変化を天気の変化としてではなく、高度の変化に置き換える。現在もなお信頼度からいえばスイスのトーメン社の航空スポーツ用の高度計ということになる。 それはアナログのアネロイド気圧計を使っている。金属の缶が気圧でへこんだりふくらんだりする動きを拡大して針を動かしているので、高度の変化が刻一刻と表示される。
ところがデジタル高度計では、圧力センサーを一定間隔の時間をおいて定期的に動かして気圧データを収集する。その定期的に動かす間隔が、必要とする頻度より細かくなってくれれば、連続的に計測しているアナログと表面上は同じになる。
歩行用高度計としての実用性能としては、エレベーターやエスカレーターの動きに反応するぐらいは期待したい。ところが、時計型高度計の老舗のカシオがいまだに計測間隔を2分間としていて、メートルの精度で表示するセッティングになっている。時間に直すと50mの上り下り以下の速度に対してしかリアルタイムに対応できないのは残念だ。
日本の標準的な登山道では、1時間に300mの上り下りを基準にして考える必要がある。速い人は400m以上登ってしまうし、下りでは1時間に700m以上下るということも珍しくない。 日本製高度計の計測・表示がユックリズムの登山者のベースにさえ追いついていない、という不満がだんだんと募ってきた。
価格的にも買いやすくなったフィンランドのスント社の高度計つき時計の新しさは計測間隔の短さだ。こちらは8秒ほどの間隔で計測して、1m単位で表示する。そして、毎分の上昇・下降速度が表示されるのだ。 これによって登山道での計算ずくのペースメークをすることが可能になった。もちろん頭の中にはシミュレーションマップの〇やら◇がインプットしである。リーダーとして初心者を連れていく場合には、オーバーペースを防ぎつつ、積極的にペースメークしていける強力なナピゲーションツールといえるだろう。
道なりに行くがはずれたら危険ゾーン
登山用品店で方位コンパスを見ると、安いものでは1000円以下から、高級品では2万円を超すものまである。 安物と高級品ではどこが違うかというと、もちろん求める精度が違う。東西南北という四方位がわかればいいという程度のものと、方位を角度で読めるものとが、まず大きな違いになっている。一般的にいえば磁針が大きいものほど精度を高く作りやすいし、磁針がストレスなく動けるように、回転部の軸受けを精密に加工したり、オイルを封入して磁針部を浮かせたりしている。 さらに読み取り精度を上げるため、目標をきちんととらえるための照準器をつけたり、方位ガイドになる直線定規を組み込んだりという工夫もある。ミラーによって目標物と盤面を同時にとらえる光学的な補助装置を利用できるものもある。そして方位精度が高くなればなるほど、地図が示す地軸の北と、磁針が示す磁北との狂いが問題になってくるので、そこで偏差修正装置というのが内蔵されるものも出てくる。
国土地理院発行の地形図を見ると「磁針方位は西偏約六度四〇分」などと書いてある。西偏の角度は緯度によって違うし、年によっても違ってくるが、本州中央部の山岳地帯では約七度と覚えておけば間違いない。 ときどき地形図にその西偏約七度の磁針方位線をあらかじめ書き込んでおいて、コンパスで地図の北を見るときにはその線に合わせよと指導されている人たちを見る。
大は小を兼ねるように、精密なことはいいことだということから一生懸命に線を引いているのだろうが、見えるところだけきれいにしでもダメだという好例といえる。 方位を角度で測ろうというほどの精度を考えたときには、移動距離をできるだけ正確に測る方法がセットになっていなければ、それはとうてい実用的な精密さとはいえないからだ。
