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登山で起こる病気やケガに対応するための方法や救助

トレッキングは自然の中での活動であり、ケガをする可能性があることを念頭に置いておく必要があります。ここでは、トレッキング中にケガをした場合の対処法について説明します。

小さな傷やすり傷の場合
トレッキング中に小さな傷やすり傷を負った場合は、まずその場で手当てをすることが重要です。きれいな布で傷を覆い、石鹸と水で傷口を洗い流します。次に、適切な消毒剤を使って傷口を消毒し、ガーゼで覆います。傷が悪化しないように、定期的に傷口を確認し、消毒を繰り返しましょう。


エマージェンシーキットを持って行こう

体調が悪くなったり、虫に刺されたり、ケガをするなど、自然のなかではどんなことが起こるかわからない。そんなときに活躍する救急用具はどの山行にも必ず持参したい。

靴擦れを起こした
足と靴の間にクッションを入れ、状況を緩和
初めて登山へ行く場合でも事前に何度か使用するなどし、履き慣らしたトレッキングシューズで山へ向かうのが鉄則だが、それでも靴擦れを起こしてしまう場合がある。そんなときは、応急処置として擦れた部分に絆創膏を貼るなどして、足と靴がなるべく触れないようにしよう。 同時に、ヒモを締めすぎたり緩めすぎていないかなど、シューズの履き方、フィット感を再チェックしよう。

体調が悪くなった
こまめな水分補給は必須。どうしようもないときは、個人用医療薬を
長時間野外で行動する登山では、水分やカロリー不足、温度変化などによって、体にさまざまな影響があらわれる。体調を崩さないために、こまめな水分補給や適切なウエアリングが欠かせない。特に水分不足は熱中症や筋痙攣など、さまざまな症状を引き起こすので注意。それでも体調が悪くなった場合は薬を使用する。ただし、逆に体調が悪化する場合もあるので、必ず普段から飲み慣れている薬を。

蛇や昆虫に刺された場合
トレッキング中に蛇や昆虫に刺された場合は、まず傷ついた部位を安静にして、その場で様子を見ます。痛みがひどい場合は、アイシングを行い、痛みを軽減します。傷が腫れた場合は、抗ヒスタミン薬を使うことで腫れを抑えることができます。蛇に噛れた場合は、速やかに救急車を呼び、毒の種類に応じた対処を受ける必要があります。

蜂などに刺された
早急な毒抜き、その後は塗り薬で対応
ハチや毒虫に刺されたり、ヘビに噛まれてしまった場合は、状況が悪化しないように直ちにポイズンリムーパーを使用する。毒や毒針を排出した後は患部を消毒し、虫さされ用の薬を塗ること。傷がついて出血した場合は、清潔な水で清浄したのち、ガーゼを当てて伸縮包帯などで止血する。植物に触れてかぶれが出た場合などは、抗ヒスタミン剤入りの副腎皮質ホルモン軟膏を塗るといい。

打撲、捻挫をした
基本的対処は部位の固定と冷却、安静
山で多いケガが捻挫と打撲だ。ともに基本的な対処方法は、しっかりと患部を冷やし固定すること。軽い捻挫ならテーピングで固定し、トレッキングポールなどを使用し、患部に負担がかからないように歩くこと。下山後に医療機関で適切な処置を受けよう。骨折などの疑いがある場合は、無理をせず速やかに救助要請もその際、じっとして体温が下がらないよう保温対策も忘れずに。

骨折の場合
トレッキング中に骨折した場合は、まず傷ついた部位を安静にして、その場で様子を見ます。痛みがひどい場合は、アイシングを行い、痛みを軽減します。骨折が疑われる場合は、直ちに医師の診察を受ける必要があります。骨折の場合は、誤った対処方法を取ると悪化する恐れがあるため、専門医の指示に従うことが重要です。


凍傷の場合
トレッキング中に寒さで凍傷を起こした場合は、凍った部位を温めずに、まずは保温し、早急に医師の診察を受ける必要があります。凍傷は、深刻な組織の損傷を引き起こすことがあり、正しい処置が必要です。

軽度の高山病の場合
高山地帯でトレッキングを行う場合、高山病にかかる可能性があります。軽度の高山病の場合は、まず休憩し、水分を補給します。酸素ボンベを使用することで、酸素濃度を上げることができます。また、高山病の症状が軽度であれば、下山して標高を下げることで症状が改善することもあります。

トレッキング中にケガをした場合は、まず冷静に対処し、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。予め、応急処置に必要な薬や機材を持参することも推奨されます。また、トレッキング前にトレーニングを行い、体力をつけておくことも大切です。安全にトレッキングを楽しむためにも、事前の準備と対策が欠かせません。


基本的なファーストエイドキッド
必要なのはコレ!
すべての山行に必ず持参を
ここで紹介するアイテムがあれば、虫刺されから外傷、総挫まで、山で起こりうる一般的なケガに対応することができる。快適な登山のために毎回持参すること。緊急時、誰が見てもわかりやすい赤色のパッケージも必須だ。

消毒液
カット綿
ガーゼ
三角巾
湿布薬
アウトドア緊急対応マニュアル(ガイド本)
ばんそうこう
冷却シート
テーピング類
包帯
エマージェンシーシート
ハサミ
ピンセット
テープ
ボイズンリムーパー


気になる女の子のエマージェンシー

女性にとってはどうしても無視できない山で気がかりなアレコレ。

山での紫外線対策
山にはSPF50+の日焼け止めを持っていき、1時間おきに塗りなおしています。肌を焼きたくないことももちろんありますが、日焼けをすると体力を消耗するような気がするので、念入りにしています。それから、目の日焼け対策も忘れずに。目に過度の紫外線を浴びると炎症をおこしかねないので、サングラスだけでなく、UVカット機能のある目薬も持参します

山小屋泊やテント泊でお風呂に入れないときはどうしていますか
汗の臭いは気になりますよね。 汗拭きシートを必ず用意して、夜寝る前にテントの中で全身を拭いてしまいます。1枚で全身を拭ける大判のタイプが使いやすいです。寝る前に体を拭くとさっぱりして気持ちがいいですし、それだけで安眠につながります。翌日の気分もぜんぜん違いますよ

おすすめの冷え対策を教えてください。
夏なら高山でも使い捨てカイロがあれば充分。それでもどうしようもなく寒いときは、ナルゲンボトルにお湯を入れて湯たんぽがわりに重ね着よりも即効性があります。 あとは温かい飲み物で体の外と中から温めればばっちり。

山でのトイレはどうしていますか?
女性は、山でのトイレはどうしても億劫になりがちですが、山でのトイレがなるべくストレスにならないように、さっと済ませられるグッズを工夫しています。首にかけられるトイレットペーパーホルダーは、見た目もかわいく両手があくので便利です。途中の山小屋などにトイレがあればその都度立ち寄って済ませるようにするといいですね


セルフで治す

「生兵法は大ケガのもと」だが、野外では思わぬ病気やケガに見舞われることもある。病院で処置を受けるまでの間、病気やケガの被害を最小限に抑える「ファーストエイド」の知識は持ちたい。

山でよく起こる病気には「熱中症」「低体温症」「高山病」がある。 夏山で多発するのは熱中症。高温環境で水分補給を怠ったり、汗を大量にかいたのに発汗で失われる塩分(ナトリウム)を補わなかったりした結果、体内の水分と塩分のバランスが崩れて体温が異常に上昇する病気だ。

逆に体温が異常に下がるのが低体温症。「夏山で?」と疑問に思うかもしれないが、北海道・トムラウシ山で起こった遭難では9人が低体温症で亡くなっている。夏山でも雨に濡れたり、風に吹かれたりすると体温を奪われ、震えを伴う初期の低体温症に陥る。服が濡れている場合は乾いたものに着替えてカラダを乾かし、温かい飲み物やエマージェンシーシートなどで温めて体温の回復に努める。

高山病は酸素不足で起こり、標高2000m以上になると増えてくる。頭痛、呼吸困難、めまい、吐き気などの異変を感じたら高山病のサインかも。水分を補い、速やかに下山すべし。 ケガに関してはスポーツ障害対策の基本でもある「RICE療法」を確認。 擦り傷・切り傷、捻挫・骨折に対する正しい応急処置法を学びたい。

熱中症
種目別の発生件数では野球に次いで登山は第2位!低山のトレッキングでも、気温が高く、日差しが強い時間帯に長時間歩くと危検度が増す。それ以外でも湿度が高かったり、風が弱かったりすると、汗が蒸発しにくく熱中症を招きやすい。ことに暑さに慣れていないシーズン初期は要注意。

熱中症予防で大切なのは水分補給。夏山で動き回ると1時間に1リットル近い汗をかくケースもある。 「喉が渇いた」と思ったときにはすでに軽い脱水状態なので、夏場は30分おきにコップ1杯程度の水分を補給する。汗を大量にかいたときは発汗で失う塩分が補給できる塩飴やスポーツドリンクを併用する。吸汗速乾性の高いウェアで汗の蒸発を促し、帽子などで直射日光を防ぐ工夫も重要である。

擦り傷・切り傷
トレッキングで頻発するのが転倒などによる擦り傷や切り傷。軽いものは傷から出る体液を保持し、そこに含まれる傷を治す因子の働きを最大限に活かして傷を修復する「モイストヒーリング(湿潤療法)」で治す。治療にはモイストヒーリング専用絆創膏を用いるが、傷が大きい場合は患部を洗って水気を拭いてから、ワセリンを塗ったガーゼを当てて、テープか包帯で固定して傷を保護して急場をしのぎ病院へ。セルフでは対応が難しい咬み傷、刺し傷、裂け傷も同様の応急処置で。 出血には、患部をよく洗った後、心臓より高い位置に上げてから、清潔な布やガーゼを強く押し当て、テープか包帯で固定して対処する。

捻挫・骨折
折れた骨が皮膚を突き破っているような明らかな骨折(開放骨折)は別として、捻挫か骨折かは素人には判断がつかない。関節があり得ない方向に動いたり、吐き気を伴うような激しい痛みがあるときは骨折が疑われるが、痛みが比較的軽く「捻挫だ」と思っても実は骨折しているケースもある。 足や手を挫いたらRICE療法に沿って応急処置を施す。

下山して医師に診せるまでは患部が動かないように固定することが重要。《サムスプリント》という万能副木があると重宝するが、ないときは木の枝などを当ててテープや包帯で縛って固定。トレッキングポールは歩くときにも便利だが、副木や松葉杖の代わりにもなってくれる。


救助を求める

ケガや病気などで自力で歩けなくなったり、道に迷って現在地が分からなくなったりしたら、いよいよ遭難を覚悟。急いで外部に急を知らせる。

連絡乎段は携帯電話その場で通じるなら110番で所轄の警察と連絡を取る。その際、遭難した日時、場所の目安、ケガ人や病人の有無とその程度、登山届の提出先など、伝えるべきことを紙に書いて整理しておくとスムーズ。折り返しの電話が入ることがあるので、通話後もしばらく留まる。

問題は携帯の電波が入らない「圏外」のとき。谷筋や鬱蒼とした森林の中にいると電波が入りにくいので、尾根筋に移動して電波が拾えるかどうか試してみる。キャリアによって電波の入り具合は違うから、メンバー全員の携帯を持参して連絡を取る。

ただし陽が落ちできたら道に迷う恐れがあるので、無理して動かないこと。救助要請しても、救助隊が助けに来てくれるのは日が昇ってから。ビパークをして、翌朝連絡を取ろう。明るくなって冷静になると、案外簡単に現在位置が分かって自力で下山できるケースもある。

たとえ道が分かっても、動けない同行者がいる場合、背負って下りようなどという無謀な考えはさっさと捨てるべき。救助のプロでも3人で1人を運搬するのが基本。 素人の手に負えるわけもないから、素直に助けを呼ぶべきだ。

救助をシミュレーション
遭難すると頭が真っ白になって何も考えられなくなる。有事に備えて、遭難から救助までを事前にシミュレーションしておきたい。 まずは現状把握。自分たちはどこにいるのか、ケガや病気をしているならその程度はどのくらいなのか。さらに日暮れまでの時間、今後の天候予測も行う。

続いて、谷筋や崖などを避けて安全な場所に移動し、ケガや病気の応急処置を行う。そこで頭を冷やし、救助を要請すべきかをもう一度判断。要請すべきという結論が出たら携帯電話などで連絡を取る。 外部と連絡が取れたらビパークの準備などをして救助を待つ。その間、食料と装備は同行者全員の共有財産と考えて有効活用したい。



山岳保険に加入する

自分以外の誰かのため備えておく大切さ
山歩きやしていて、ふとこんな会話になることがある。
「ヘリコプターで救助や呼んだら、いくらかかるんだろうね」
自分には関係ないことのように話していたけれど、山歩きをしているからには、まったく無縁の話ではない。確かにタダで救助してくれるとは思っていないが、果たしてそれが自分で支払える金額なのだろうか。親や兄弟、旦那さんや奥さん、子どもにまで負担をかけてしまうことになったら。

そんなことを考えたら、山岳保険への加入、という選択肢に行きつくはずだ。実際に、山岳遭難の救助費用がいくらなのか。それは、そのときの状況に応じて変わってくるものだが、例えば警察などの公的機関による救助であれば、ヘリコプターの台数も関係なく無料で救助をしてくれる。しかし、それが民間機関であった場合、専門の救助員、山岳会や猟友会の人たちが出動することもあり、さらに民間のヘリコプターや救助隊が動員されると、100万~200万円程度の実費が請求されることもある。

その金額や聞いて、救助依頼や取り消し命を落としてしまう、なんてことは是が非でも避けたい。もちろん、山岳保険に入ったからといって救助を要請するようなことにならないのが一番である。保険とは、万が一の備えのひとつとしてそっと携帯しておくものと考えるべきだろう。

山岳保険は一般の保険会社やアウトドアメーカー、日本山岳協会などにより販売されている。その種類には、トレッキングやハイキング、キャンプや野外活動のみを対象とするタイプと、ロッククライミングや雪山登山などの本格的な登山も補償対象に含まれるタイプがある。契約期間もさまざまで、日帰りや1泊2日の短期契約から年間契約まであり、自分のスタイルに合わせて選ぶことができる。

これらの山岳保険では、救助費用(救援者費用)、ケガや病気などの傷害、他人にケガなどを負わせた場合の賠償責任、携行品損害などが補償される。前日にインターネットで申し込めるタイプもあり、保険料は1泊2日なら500円から。安心のコストだと思い、ぜひ事前に入っておきたい。

また、急な保険加入を希望する場合などには、インターネットで申し込めるものもある。これから登山を始める人が周りにいるのならば、山を歩きながらそんな話をしてみてほしい。山に対する意識と備えることの大切さを、山を知れば知るほど感じるだろう。決して自分だけのためだけではない、思い浮かんだ大切な人のためにも。